ウイルス進化の観察変異そのもの(免疫減衰)が根源か?感染シミュレータVer0.91以降、 各種設定値を初期設定ファイル(kss.ini)で指定できるようにしましたので、 色々な実験/テストが行えるようになりました。 とりわけ、おまけ機能の「変異モード」のシミュレーションにおいて、 変異したウイルスの属性値に増減を加えるのが基本なのですが、 その増減幅をあえてゼロに設定した場合、変異の方向性がどうなるかを検証してみました。 以下内容は、全て本シミュレータの模倣環境で確認した結果です。 【背景】 なぜ、このようなテストをしたかと言いますと、 Ver0.91で追加しましたC-Key(変異中断/再開機能)と、 H-Key(人為変異株投入機能)の双方を駆使してテストした結果で、 系統距離(≒感染シミュレータでは親等値)がある程度離れた株同士が生き残る傾向が出ていたのですが、 この時のテストでは、属性変異も含まれていたため、 純粋に親等距離単独で離れる方向に向くのか?というところでは、 若干詰められてない部分がありました。そこを探ってみようとしたわけです。 【テスト設定】 これは、あくまでも一例ですが、初期設定ファイル(kss.ini)内の変更から... まずは感染シミュレータで使用しているウイルス属性変異時の増減単位を、 以下のように全てゼロ設定にします。 #濃厚接触時感染率(%) INFECTION RATE(MUTATION UNIT) =0 #感染後回復するまでの日数 SICK DAYS(MUTATION UNIT) =0 #潜伏期間 HIDING DAYS(MUTATION UNIT)=0 #無症状率(%) FINE RATE(MUTATION UNIT) =0 #致死率(%) DEATH RATE(MUTATION UNIT) =0 #免疫維持日数 EFFECTIVE DAYS(MUTATION UNIT) =0 #一親等当たりの免疫減衰率 DEGREE DECAY RATE= 5.0 or 2.5 も変更しておきます。 初期値の20でもいいのですが、 傾向を見るには小さい方がいいかもしれないと思いましたので、 5.0と2.5の比較を行いました。 あとは起動して間もなく変異株が5個ぐらいまで増えたところで、 人為変異株投入(H-Key)を一度押すと、 感染力が上がるため収束しにくくなります。 非現実的ではありますが、観察する時には役立つことが多いです。 それからノイズを減らすため「A」キー連打で「移動制限率」を0%に変更、 「Nキー」連打で「感染対策者率」を0%にして3時間ほどすれば100年分のシミュレーションが行われます。 待ちきれない場合には「ESC」キーを押して下さい。中断しますが途中までの集計結果は出力されます。(kss.txt,mutation.txt) 【結果】 傾向を調べるために、 初期設定ファイルで指定する一親等あたりの免疫減衰率 "DEGREE DECAY RATE"の値を5.0と2.5で比較してみますと、 見えてきたのは、基本的には100%減衰に至った(互いの免疫が効かない)株同士が残って行く傾向が 見られました。すなわち"DEGREE DECAY RATE"の値が5(%)の場合には、 20親等越えぐらいのものが残っているのです。では2.5(%)の場合はどうか? 予想どうり残存株同士のほとんどが40親等越えになりました。 お互い共存する株間の免疫減衰が100%満了するまでは、 変異を続けるという結果になったわけです。しかし、これは見かけ上の結果で、 変異は減衰が100%満了していても続いています。 このような段階になると変異しても方向性はないため、 たまたま残るものが残っているという状況になります。 ですので40親等をちょっと超えたものもあれば、 47〜49ぐらいまで進んでいるものも見られます。 もっと時間をかければ方向性は無いながらも少しずつ多くなる傾向は出てくるでしょう。 ※当初は免疫減衰が100%満了した段階になると方向性は無くなると考えていたのですが、 設定を変更して色々テストしてみますと、より高世代株が残存してゆく傾向があることが判ってきました。 これはVer0.94で追加した指定株の変異停止/再開機能「SPACEキー」などを駆使し、 ウイルス環境を用意すれば分析可能なのですが、ウイルス属性の変異幅をゼロに設定し、 親等あたりの免疫減衰率も100%に設定、株間の優位性を全く失くしてしまっても、 なおもその傾向が確認できます。 残存できない株を分析しても特徴のある消滅があったわけでもないので、 モニタリングして詳細を観察してみますと、 まずは感染者を持つ有効株はどんどん増える傾向があります。 そしてある限界点まで来ると、増えるのと同じぐらい消滅するものも出てきて、 有効株数としては頭打ちになります。 「感染シミュレータ」の事例では90個(種類)ぐらいまで増えて、 それ以上増えなくなるケースがよく確認(Ver0.95以降確認可能に)できます。 優位性の等価な株同士が増えてくると、 自ずと感染者数を分け合うようになります。株あたりの感染者が減った状態でも、 ある程度の波があり振幅の影響でボトムがゼロに近づいているので、 消滅する場合があるようです。 このような状況下で全ての株に共通して言えるのは、 消滅する可能性のある機会が何度も訪れてきます。 では低世代株と高世代株の違いは何か?単に何度経験するかの違いだけです。 その機会の多い株は消滅しやすく、少ない株は消滅する可能性が低い。 それを繰り返せばどうなるか?自ずと高世代株に偏ってくることになります。 中立の変異であっても高世代に向かってゆくのは、数理的に自然な流れと言えそうです。 「進化圧」という言葉もよく耳にしますが、 少なくともここ仮想環境においては圧力と言うより、 Limit(t→∞)による収束値という見方が妥当です。 (※現在の最新バージョンでは、終了時に出力される"mutation.txt"の終盤に、 感染者数ランキングTOP10内に入る株同士の親等距離を列記していますので確認できます。) 3例目として"DEGREE DECAY RATE =1.0"でも試したのですが、 100年の設定では足らなかったようで、親等増加が途上の状態で終了してしまいました。 MAXIMUM DAYS =36500 の値を変えればテストできるはずです 【ウイルス属性値に変異幅がある場合は?】 変異は減衰が100%満了していても続いていますので、 通常の変異幅が少しでもある場合、以下の中立でない属性値が、 増加する場合は優勢変異として生かされますので、 こうなると変異は見かけ上もどんどん進んでゆきます。 <参考★感染シミュレータ内の傾向> ・中立のもの --- 感染時致死率,免疫維持日数 ・中立でないもの --- 接触時感染率,無症状者率,潜伏期間,感染期間 ※中立のものは、変異モードで100年分過ぎてもほとんど変わらず ※中立でないもの上記4種類は、長期的な視点では概ね増加傾向で推移しますが、 一時的に減少したほうが都合が良いタイミングもあった可能性はあります。 ここの詳細は分析していません。 【結論】 あくまでも、本シミュレータの仮想コロニー内の結論になりますが... 変異した場合、一般的にはそれが感染拡大に有利になるか否かで、 有利になったものだけが残って行く。 それが進化の基本原則(適者保存)であることは言うまでもないことだと思います。 しかしその前に変異自体が免疫減衰のお陰で有利になるという性質があることは、 もっと進化にとっての根幹かもしれません。 ウイルスの属性値で中立でないものは増減のいずれかは優勢で他方は劣勢となります。 たまたまその時点の環境において優勢なものが保存されてゆきます。 ここは時期によっても違いが出てくるかもしれませんが、 例えば接触時感染率などは、ほぼ増える方向に変異したものだけが残って行きます。 そういう意味では変異成功(採用)率は50%と見なすこともできます。 一方、変異自体による親等距離増加(≒免疫減衰増加)はプラス材料にしかなりません。 変異により塩基配列が元に戻らない限りはですが... ここは根本的な違いであり同列で見れないところです。 とにかく変異さえたゆまなく続ければウイルスは存続しやすくなります。 ウイルス属性の変異は添え物みたいに見えるわけです。 PS: 本項をまとめてからその後、補足で逆に免疫減衰が起きない環境"DEGREE DECAY RATE =0.0"にして、 属性変異を少し開放(≠0)して試しましたところ、 なんとしばらく鬩ぎあいが続いて、感染率の高くなった変異ウイルスもランキングTOPに割り込んではきたのですが... 宿主側の集団免疫に遭ってしまい、いつのまにか終息してしまいました。 この件についてCopilot(クイック応答)さんから、 「免疫減衰ゼロでも突破できる“超変異”は存在するか?」という問いをいただきました。 実はそこも気になっていたので補足しておきます。 例えば一例ですが、しばらくの競り合いがあって2700日目ぐらいで終息してしまった例では、 最後に残ったランキングTOPの株属性は、初期株と比較して以下3点が変異したものでした。
これらは全て免疫の影響を受けないと仮定すると感染拡大には好都合な属性値ばかりで、 全て増加したものが残っていました。まさに「変異のポテンシャルはあるが...」なんです。 終了時の波形を観察(↑画像参照)しますと、終息してしまう直前の新規感染者数のPEEKがかつてない最高値に、 それに伴い若干遅れて免疫保持者率もかつてない最高値になっています。 これも数周期前から、徐々に波を作りながらこの方向に進もうとしているのが確認できます。 結局、免疫保持者率増加による集団免疫成立での幕引きです。 だったら、なぜ感染率など抑え気味の株がはびこらないのか?とも思うのですが、 流石にウイルスと言えども、先々のことを考えて抑えてゆこうなんて戦略はないわけで、 近視眼的に拡大志向の1本調子になってしまうのではないかと思います。 「超変異は可能だが、免疫減衰がなければ進化は続かない」この役割は重要だと思います。 |